webサイトのコストパフォーマンスを考える – webマーケターの考えごと

webサイトのコストパフォーマンスを考える

普段webマーケティングの仕事をしていると、どうしても「webサイトを通じて○○する」という考え方になってしまいます。しかし、webサイトはあくまで手段ですから、コスパが悪かったり不要だったりすれば使うべきではないはずです。この視点は結構忘れてしまいがちですが、扱っている商品・サービスのマーケティング全体をとらえ、適切な施策を行うためにはとても大切です。そこで、webサイトのコストパフォーマンスや、webサイトにできることとできないことをまとめてみます。

webサイトはどういったメディアなのか:PESOモデルでの分類

マーケティングや広報の世界では、各種メディアを分類する手法としてよくPESOモデルというものが使われます。割と明快でわかりやすいので、それに沿ってwebサイトの位置づけを整理します。PESOモデルとは、メディアをPaid Media(各種広告)、Earned Media(PR・パブリシティ)、Shared Media(SNS・ブログなど)、Owned Media(店舗・webサイト・公式SNSなど)の4つにわける考え方※です。こういった分類をすることで、メディアごとに「できること」と「できないこと」をおさえて、どのメディアを使って、あるいは複数組み合わせてマーケティングしていくかを考えられます。そして、PESOの分類では、webサイトはOwned Media(オウンドメディア)に位置づけられます。

※SharedとOwnedの2つにSNSが出てきますが、Sharedのほうは「SNSのユーザー同士で商品・サービスが共有される、バズる」、Owendのほうは「企業公式アカウントでの情報発信」といったイメージです。

webサイトは、数ある販売手段のうちのひとつ

ここからのPESOモデルの解釈は、完全に私見ですのでその点はご注意ください。

PESOのうち前の3つ(Paid、Earned、Shared)はいずれも集客手段であり、実は最後のOwendのみが販売手段です。つまり、基本的に商品・サービスは、店舗やwebサイトといったオウンドメディアを通じて購入されるということです。オウンドメディアは、突き詰めると「営業活動する主体」であり、別に店舗がなくても、商品・サービスを売る人がいればその人自身がオウンドメディアだともいえます。例えば、BtoBで店舗がなく取引先への直販の場合、顧客との打ち合わせや架電、メールなどがオウンドメディアにあたります。このような「モノを売るために使う手段」のひとつとして、webサイトがあるということです。

余談ですが、上記の「商品・サービスを売る人がいればその人自身がオウンドメディアだともいえ」るといった考え方が面白いと思った方には、M・マクルーハン『メディア論』をおすすめします。1987年に日本語訳が刊行されたメディア論の古典で、「メディアとは身体の拡張だ」といった考え方が書かれています。インターネット以前の時代の本ですが、不思議と今の時代に当てはまることが多いように思います。

webサイトのコスパが悪くなる場合とは

webサイトというメディアは、大抵はとてもコスパが良いと思います。コストは制作費とサーバー代・コンテンツ更新費用(委託会社への代金など)くらいで、以下の「おまけ」にも書いたように日本中に広くアプローチできるというパフォーマンスを発揮するからです。ただ、コスパが悪くなる場合もあります。コストについては、低予算でもそれなりのwebサイトは作れる時代ですので、ほとんどの場合は期待するパフォーマンス(例:商品の購入数、サービスへの申込数、問い合わせ数、資料請求数など)が発揮できていないということだろうと思います。

パフォーマンスについては、webサイトにできることとできないことを考えるとわかりやすいです。先ほどのPESOの分類から、webサイトにできることは「販売」であり、できないことは「集客」です。広告やPR、SNSでの周知によって商品・サービス名や企業名を検索してもらうことでwebサイトに訪問してもらえるわけですが、まずもって集客がうまくいってないと、webサイトはパフォーマンスを発揮しようがありません。あるいは、集客はうまくいっている(毎月ものすごい訪問数がある)のにパフォーマンスが発揮できていないこともあるかもしれません。その場合、webサイトの導線やコンテンツに問題があるのかもしれませんが、そもそもその商品・サービスの販売にwebサイトというメディアが適しているのか?を考えてもよさそうです。

おまけ:webサイトのリーチ率をおさえる

webサイトは、www(world wide web)といわれるように「全世界とつながれる」手段ですが、実際はどれくらいの人が利用しているのでしょうか?総務省の情報通信白書(令和3年度版)によると、日本の個人のインターネット使用率は83.4%(2020年)です。年齢別にみると、13~59歳は95%以上、6~12歳・60~69歳は80%程度、70~79歳は60%程度、80歳以上は25%程度となっています。子どもは親からインターネットの利用を一部制限されていることもあるでしょうし、高齢者の方はメールを使うだけでブラウジングはしない方も一定いらっしゃるでしょう。そのため、数字以上に、小学生までの子どもや高齢者の方に対してはwebサイトを通じてアプローチしづらそうです。子ども向けや高齢者向けの商品・サービスをマーケティングする際は、web以外の施策(例:テレビ広告、雑誌掲載、DMポスティングなど)の重要性が高そうですね。あるいは、子どもの保護者や高齢者の家族などにwebサイトを通じてアプローチする方法もありそうです。裏を返せば「13~59歳の世代については、webサイトを通じて日本中のほとんどの人にアプローチできる」といえます。

以上、販売手段としてのwebサイトという話でした。お疲れ様でした。


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