「マーケターの論理」と「顧客の論理」 – webマーケターの考えごと

「マーケターの論理」と「顧客の論理」

マーケターとして働いていると、自分と顧客の感覚が徐々にずれていく怖さを感じます。このずれが大きくなると「何の施策を打っても当たらない…」という状況になり、とてもしんどい思いをすることになります。

なぜ感覚がずれていくのか、そして、どうすれば顧客の感覚を取り入れていけるのかについて考えてみます。

マーケターは、自社商品について世界一のヘビーユーザーになる

マーケティングで相手にするのは、自社商品の購入を検討している生活者(顧客)であり、その商品や商品カテゴリについての知識や関心はバラバラです。そのため、相手の知識や関心に合わせたコミュニケーションを取るべきです。

こうやって書いてみると「何を当たり前なことを」と感じるのですが、いざ日々のマーケティング活動をしていると、この当たり前がおろそかになってきます。

それは、自社商品を売るためにベネフィットや特徴を知れば知るほど、いつの間にかマーケター自身がその商品の良いも悪いも隅々まで知り尽くし、あたかも世界一のヘビーユーザーのようになってしまうからです。

マーケターは顧客へのコミュニケーションでは、商品知識の少ない相手を想定して情報設計やメッセージを考えます。しかし、どうしても「マーケターの論理」がもとになってしまいます。

以下のように「マーケターの論理」と「顧客の論理」は異なるので、マーケターが考えた施策が顧客に響かないことはまったく珍しくありません。

  • マーケターの論理:商品の正しい知識を網羅したうえで、顧客が買う理由を考える
  • 顧客の論理:自分なりの前提知識に商品の知識を一部加えて、買うかどうかを決める

私は「マーケターの論理」を否定したいわけではありません。商品理解が重要なのは言うまでもありませんし、プロダクト部門などとの社内コミュニケーションもある中で、避けて通れるはずもないでしょう。

💡重要なのは、商品理解をすればするほど「顧客の論理」から遠ざかっていく、というマーケターのジレンマを意識することです。

このジレンマは、マーケティングとは切っても切り離せないものであって、うまく付き合っていくしかないと考えています。

「顧客の論理」に近づくためにできることは何か

マーケターは商品理解をしないわけにはいきませんが、その一方で「顧客の論理」をつかんでいく取り組みをして、顧客の論理に少しずつ近づいていきましょう。

例えば、以下のようなことができます。

  • 普段考えている施策よりも、1歩2歩手前の施策を実施してみる
  • 自身が何かを買うときの「顧客の論理」を意識し、自社商品の「顧客の論理」の参考にする
  • 顧客ではない人に、商品についてどう思うかを聞いてどういう前提知識があるかを探る
  • 顧客の声を直接聞いて、何を検討材料にしていたのかを探る

上2つは自分で考えること、下2つは実際に人に聞いてみることです。

💡意外かもしれませんが、まずは自分で考えることに優先して取り組むべきです。

私の感覚では、まずは自分自身がどういう「顧客の論理」を持っているかを深堀りするほうが良いです。

そして、自分なりの「顧客の論理」施策を実施して検証すればよいのです。自社商品を改めてフラットに見てみると、たいていは、普段考えている施策よりも1歩2歩手前の情報提供をするような施策になるのではないかと思います。

実際に人に聞いてみる取り組み(インタビュー)は、上記の自分で考えることをある程度やってみて「顧客の論理とはこういうものかも」という仮説を持てるようになってから、実施するべきです。

インタビューはマーケティングにおける一般的な分析手法ではあるのですが、その一方でとても難しいものでもあります。

分析手法としてのインタビューとは本来、マーケターが仮説を立てて、それを検証するために行うものです。仮説なしに話を聞いていても、その場では「なるほどなぁ」と思える話は聞けるかもしれませんが、大きな発見をすることは難しいでしょう。

それは、マーケティングにおけるインタビューの相手は明確な持論を持っている人ではなく、一般の生活者だからです。

インタビューは相手を探したり実際に話したりするために、結構な労力がかかります。なまじ労力がかかる分、インタビューをして「こんな話が聞けました!」という共有だけで周りから評価が得られたりします。

しかし、仮説なきインタビューは時間の無駄ですので、「顧客の論理」に近づくためには、まず自分で考える→自分なりの仮説を持つ→実際に人に聞いてみる、という順番を守りましょう

「マーケターの論理」は「事業者の論理」ともいえる

さて、この記事で「マーケターの論理」としているものは、広く捉えると、事業会社に所属する方全員に当てはまります。

これを「事業者の論理」と名付けると、以下のような説明ができます。

  • 事業者の論理:事業の正しい知識を網羅したうえで、仕事にあたる
  • 顧客の論理:自分なりの前提知識に商品の知識を一部加えて、商品を買ったり使ったりする

事業者と顧客の感覚がずれていくのは、どの企業でも起こっていることでしょう。部門をまたいで「顧客がどう見えているか」の話をするだけでも、「顧客の論理」を意識するきっかけになるかなと思います。

結局は、コミュニティの内外では情報の非対称性が存在する、という話です。書いてみると当たり前なことなのですが、つい忘れがちになるので、気を付けていきたいですね。

以上、マーケターが抱えているジレンマについての話でした。お疲れ様でした。


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