マーケターは、企業が商品・サービスを提供する立場にいます。その中で、なるべく生活者視点に立って考えることで、筋の良いマーケティング施策を立案できます。
生活者視点で考えるために重要な、カテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)の概念についてまとめます。
生活の中で、商品・サービスがほしいと思うきっかけは何か?
私たちは生活する中で、状況や環境に応じて必要とする商品・サービスのことを考えます。例えば、以下のようなイメージです。
- おなかが空いて、手軽に済ませたいからファストフードに行こう。
- 履いている靴が目新しくなくなったから、別の靴を買いに行こう。
- 仕事がひと段落してリフレッシュしたいから、今度の休みに旅行へ行こう。
言い換えると、CEPはブランド想起より前の「カテゴリ想起」に注目する概念です。
CEPの概念は、日本ではバイロン・シャープ著『ブランディングの科学[新市場開拓篇]』で紹介されたことで、マーケティング界隈において知られるようになりました。(正確には、共著者のジェニ・ロマニウク氏が提唱されたそうです。)
2020年出版の著書なのでかなり新しい概念ですが、とても重要な考え方です。
情報やモノがあふれ多様化している現代のマーケティングにおいて、そもそもの「購買のきっかけは何か?」を探るのは一般的に有効な手立てだと思われるからです。
CEPは、「ドリルを売るなら、穴を売れ。」が定番文句となっているジョブ理論とかなり共鳴する考え方ですが、用いられる文脈が以下のように若干異なりますので、うまく使い分けましょう。
CEP
- 目的:ブランドを買う確率を高めるための“想起”を増やす(どうやって思い出してもらうか)
- 主な活用シーン:広告・プロモーション ※商品開発にも応用可能
ジョブ理論
- 目的:商品やサービスの根本的な価値を理解し、開発・訴求に活かす(なぜ選ばれるか)
- 主な活用シーン:商品開発 ※広告・プロモーションにも応用可能
カテゴリ買いをする生活者に売るために、CEPを考える
CEPの考え方では、生活者の思考・行動の流れは以下のように想定されます。
生活者は、状況や環境に応じてまずカテゴリを想起し、その後に具体的なブランドを選択肢として検討する、ということです。
例えば、以下のような流れです。
- お昼時になる(ある状況・環境)
- 「手軽に済ませたいから、ファストフードかうどん・そば、カフェあたりで済ませよう」と考える(カテゴリ想起<CEP>)
- 「あそこのうどん屋もいいけど、今日は近くにあるマクドナルドに行こう」と考える(ブランド想起)
- 混み具合を確認してマクドナルドに行く(検討・購入)
上記のように、カテゴリ想起から特定のブランドが想起される場面で商品・サービスが売れるには、「いかにブランド想起の選択肢に入るか?」が重要です。
マクドナルドであれば、大まかに考えても以下のようなCEPがあります。
- 小腹が空いたとき
- 時間をかけずに何か食べたいとき
- 子どもと一緒に外食するとき
- 友達と気軽におしゃべりしたいとき
- 気晴らしに甘いものを食べたいとき
マクドナルドであれば、10以上のCEPがありそうです。前述のロマニウク氏によれば、CEPの平均は6.4個とのことです。
CEPを見つけるには、顧客、あるいは潜在顧客の声を聞くことです。具体的には、購買データ分析、アンケート調査、webサイトの流入KW分析、ユーザーインタビューなど定量・定性の手段を組み合わせるとよいでしょう。
なお、上記のような「カテゴリ買い」だけでなく、あるブランドが指名買いされることもあります。例えば、「お昼はマクドに行こう。」などとあらかじめ決めている場合です。
この場合、上記1~4の思考・行動の流れが起こっていないように思えます。
しかし、指名買いは、生活者の頭の中でブランド想起がCEPと強く紐づいた結果と考えることもできます。
過去に何度も同じCEPの文脈で接触していることで、ブランド想起が自動化されているということです。
つまり、指名買いは、CEPを活用したマーケティングの理想形といえます。
webマーケティングにCEPを活用する
CEPを意識してwebサイト上でのメッセージをつくることで、商品・サービスの購入を促進できます。
主に以下2つのパターンがあると考えられます。
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①既存のCEPに合わせたメッセージ
すでに自社ブランドが想起されているカテゴリに対する、カテゴリ想起のきっかけを便宜的に「既存のCEP」と呼ぶこととします。
ある程度売れている実績のあるCEP=勝ち筋ですので、まずはこちらのパターンをしっかり訴求するのが重要です。
自社のブランドが想起される場面を考えれば、結果的に既存のCEPと等しくなるので、①だけを考えるのであればCEPはさほど重要に思えないかもしれません。
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②新しいCEPに合わせたメッセージ
現在自社ブランドが属している市場が伸びていれば、「既存のCEP」に対して訴求するのみで売上が伸びるはずです。
そうではない場合、新たなところから顧客を呼んでくる必要があります。ここでCEPの考え方が重要になります。
新しいCEPはさらに以下2つに分けられます。状況に応じて、どちらも狙っていきたいところです。
- 競合ブランドが想起されており、自社ブランドが想起されていないCEP
- 競合もおらずまったく新しいが、自社ブランドが想起されると仮説が立つCEP
前者のCEPのほうが「競合が想起されている」実績がある分、自社ブランド想起の難易度は比較的低いですが、実際にどの程度のシェアが取れるかは競合の強さ次第で変わります。
後者のCEPからのブランド想起が実現すれば先行者利益が獲得できるので、定期的に仮説検証をしていくとよいでしょう。
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なお、webサイト上に複数のCEPを意識したメッセージが混在すると、一貫性のないコミュニケーションになる恐れがあります。
そこで、LPを個別に作って訴求する、ターゲット別メニューを設けて分岐してもらう、といったことでメッセージを住み分けられます。
さらに、広告やSNS、各種プロモーションでのメッセージとの一貫性も重要ですので、CEPごとの訴求軸を、媒体をまたいで管理することが理想です。(ここは、私が日々悩んでいるところです。みなさんも共感いただけるのではないでしょうか。)
以上、生活者視点に立って考えるためのカテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)という考え方の紹介でした。お疲れ様でした。
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