2年以上前に読んだこちらの記事が大変共感する内容でしたので、今回参考にして記事を書かせていただきます。Minimal Chocolateというチョコレート店を経営されている方が「ブランドづくりの2階建て理論」なる話を展開されています。
ブランディングとマーケティングは重複する分野(マーケティングとはブランディングであると言い切る有識者もいる)ですので、ここでは「マーケティングを2階建てで考える」と題して話を進めます。
顧客から選ばれる商品には、何が必要か
「2階建てのマーケティング」とは、ある商品が多くの顧客から選ばれるために、以下のようにマーケティングにおける価値訴求を2段階で行うということです。
- 1階部分:商品が属するカテゴリに求められる基本的な要素
- 2階部分:商品カテゴリにおける差別化要素
1階部分の土台をしっかり固めてから、2階部分を頑張っていきましょう。
チョコレートを例にとると、カカオの含有量や食感などの要素も選ぶ理由にはなるのですが、これらは2階部分にあたります。顧客が求めているのは第一に「甘くて美味しいこと」であり、この1階部分がないチョコレートは選ばれにくくなります。
これを言い換えると、多くの顧客は「チョコレート」という商品カテゴリに対して「甘くて美味しいこと」を期待しています。
そのため、チョコレートカテゴリに属する商品を売る以上は、まずは顧客からの期待に応えることで多くの人が購入の選択肢に入れてくれます。そのうえで、カカオの含有量や食感などのオリジナリティをバランスを考えて加え、選ぶ理由を作っていくという優先順位が重要なのです。
美味しさは二の次で健康志向のチョコレートなども、ニッチ戦略と割り切るならいいとは思います。
顧客の検討は、1階→2階の順に進むか?
顧客の検討順序を考えると、「1階」「2階」という表現はすこしややこしかったりします。
実際、顧客がある商品を買うか検討するときは、1階と2階を行き来します。これは、何かを買うときに私たちは、基本的な要素と差別化要素を区別して考えたりしないというだけの話です。
ただ、広告やPRでは2階部分の差別化要素が用いられることが一般的です。以下のように1階部分を広告コピーにしても、誰からも注目されませんよね。
- 甘くて美味しい、〇〇チョコ。
- 手軽なスイーツ、〇〇チョコ。
高額な商品であれば、買ってみてダメだったでは済まされないので、顧客は2階部分に興味を持ったとしても、1階部分に納得しなければ購入しないでしょう。
「差別化」の主語は?
「差別化」という言葉が多く出てきたので、その意味するところについて触れておきます。
顧客へのマーケティング・コミュニケーションについて、STPのフレームワークで「セグメントとターゲットを明確にして、ポジショニングによる差別化が重要だ」と言われることが多いと思います。
差別化は確かに重要なのですが、この議論はしばしば誤解されて伝わっています。
💡企業が商品を差別化するのではなく、顧客がある商品に対して他の商品と異なる価値を感じることが「差別化」であり、差別化の主語は常に顧客です。
(この商品は差別化「されている」、が正しい用法です)
シンプルに、顧客がある商品に価値を感じれば買い、価値を感じなければ買わないというだけの話です。
顧客というのは私たち自身のことです。みなさん、「○○にはお金をかけるけど、××は最低限のものでいい」というように、お金の使いどころを選んでいるのではないでしょうか?同じものでも人によって価値の感じ方が異なるため、お金の使いどころは人それぞれに違うわけです。
「差別化」というのはそんなに大げさなものではありません。
他社商品と異なる機能を持っており差別化されている商品もたくさんありますが、実はそうでないものもたくさんあります。
極端な話、自社商品と他社商品の中身がそこまで変わらないと顧客に思われていても、社名やブランド名、パッケージが異なれば顧客が感じる価値は変わります。
わかりやすい例としてスポーツドリンクを考えます。アクエリアスはスポーツのときに、ポカリスエットは体調が悪いときに買う、といった使い分けをする人は多いのではないでしょうか。でも、アクエリとポカリの成分は何が違って、同じ場面で飲み比べたときにどのような効果の違いがあるか?を検証した人はいないと思います。
実際の成分や効果はさておき、スポーツのときにアクエリを飲んで、体調が悪いときにポカリを飲むことで、私たちは自分自身が感じる価値を最大化しているのです。
感じる価値は、「機能的価値」と「情緒的価値」の2つに分けられます。
場面に応じたスポーツドリンクを飲むほうが納得感がある、という点で私たちは情緒的価値を感じています。近くのお店に片方しか置いていなかったらそれで妥協するかもしれませんが、情緒的価値は若干下がります。
私たちは、アクエリアスやポカリスエットをブランド買いしているわけです。
そのため、ブランド名(≒商品名)や、パッケージのデザイン自体がブランドの資産であり、スポーツドリンク分野における2階部分といえます。そして、水分補給やイオン補給、少し甘い味といった1階部分がないと顧客からは選び続けられないのです。
以上、マーケティングを2階建てにわけて考えてみるという話でした。お疲れ様でした。
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