webサイト上のコミュニケーションで、説得はできるのか – webマーケターの考えごと
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webサイト上のコミュニケーションで、説得はできるのか

私は事業会社でのwebマーケティングに本格的に携わるようになったここ1年半ほどで、さまざまなweb施策を通じて、顧客理解を深めてきました。ここでいう「顧客」とは、当社のwebサイトに訪れてサービスの無料体験申込み(CV)を検討するサイトユーザーのことを指しています。顧客理解を深める中でつくづく思うのが、サイト上で「サービス提供側が思う訴求ポイント」を丁寧に説明をすることが必ずしもCVにつながらないのではないか?という疑問です。

上記の疑問に対して、さまざまな要因仮説が立てられます。

  • そもそも、サイトユーザーはそこまで真剣にwebサイトを見ていない
  • 新規顧客にとって、気になる点と「訴求ポイント」が合致していない
  • サイトユーザーは、それぞれの関心に沿ってページを見ている

これらの仮説は、少なくとも私が運用担当しているwebサイトでは、どれもかなり当てはまっていると感じており、これらが複合的な要因となっていると考えています。

そもそも、サイトユーザーはそこまで真剣にwebサイトを見ていない

この話は別記事に詳しく書く予定ですので、ここでは軽く触れるに留めます。私が運用担当しているサイトでは、CVしたサイトユーザーのおよそ半数が、主要なページを見ずにCVしていました。そのため、この半数のユーザーについてCVRに影響する主な要素は、ファーストビューやサイトデザインの印象、あるいはわかりやすいナビゲーションやCV導線だと思われます。つまり、そもそもユーザーの半数にとってはwebサイトに何が書いてあるかよりも、サイトの印象や導線のわかりやすさがCVRに大きく影響しているということです。

新規顧客にとって気になる点と、「訴求ポイント」が合致していない

実際に初訪問したサイトユーザーが気になる点は、マーケターが考える「初訪問のサイトユーザーが気になる点」よりも手前の事柄なのではないでしょうか。ここでいうサイトユーザーは、主に当社の名前を知って指名検索してくださった方々です。そのような方々が、webサイト上で何の情報を得られればCVしてもらえるのでしょうか。マーケターは、新規顧客を獲得する施策においては、最大限ユーザー視点に立って「なるべく手前側」の訴求ポイントを優先して伝える仕事をしていると思いますが、それよりも手前があるのではないか?という話です。

当社の場合は、フルコースで300万円という高額な教育サービスを提供しており、その一部を受講できる15万円のコースを用意しているため、なるべく手前の「まずは一部受講できます!そのために無料体験してみましょう」という訴求に重点を置いてきました。しかし、CV経路についていろいろと分析してみると、どうもこの訴求がハマっていないかもしれないと思えてきました。なぜなら、一部受講というのはフルコース受講するにあたってお試しで受講するというものであり、「一部受講だけしたい!」と思って来る人は限られているかもしれないからです。そうであれば、ユーザーとしては、自分がフルコースを受講する可能性がありそうか?あるいは自分がフルコースを受講する能力・資格があるか?という、もっと手前の疑問を先に解決しないと、一部受講を検討できないのかもしれません。当社が提供する教育サービスの全体像(フルコース)のことをよくわからないまま、その一部受講について検討できるはずがない、ということです。現在はこの仮説に基づいて、フルコースについての受講資格やスケジュールを優先的に訴求する施策を試しています。

サイトユーザーは、それぞれの関心に沿ってページを見ている

これは一般的な消費者行動にまつわる話です。我々消費者は一人ひとりに興味関心が異なるため、例えば同じwebサイトの同じページを見ていても、どの部分に関心を持って見るかは人それぞれです。そして、見たものをどう解釈するかについても人それぞれです。言ってしまえば至極当然のことではありますが、マーケティングをしていると、結構見落としがちな視点でもあると思います。N1分析やユーザーインタビューをしているときには「人ぞれぞれだなぁ」と確かに思うのですが、マーケティング戦略を立てる際にペルソナやターゲットといった顧客の抽象化をしたりしていると、この当たり前の感覚が抜け落ちていく気がしています。

前置きが長くなりましたが、ここで考えておきたいのは、webサイト上に掲載している内容が、サイトユーザーの意思決定(ここではCV)にどれほどの影響を与えられるのか?という点です。言い換えれば、webサイト上での商品・サービスの説明を通じてサイトユーザーを説得できるのか?ということです。明確な答えがある話でもないのですが、私は経験から「それほど影響を与えられない、つまりは説得できないのではないか」と考えています。サイトユーザーがCVするのには、その人の購買行動における習慣や考え方、またその人が置かれている環境が大きく影響しているはずです。習慣とは例えば、業界シェアNo1を好むかあえて避けるか、機能的価値と情緒的価値のどちらを重視するか、などです。環境とは、懐具合もそうですし、その商品・サービスを購入する必要に迫られているか、などいろいろです。webサイトで説明されている商品・サービスの説明が、これらの習慣・環境に合致すればCVするのではないでしょうか。そうであれば、サービス提供側が訴求ポイントだと思っている点が多くの人の習慣・環境に合致せず、訴求ポイントと思っていなかった些細なことが多くの人の習慣・環境に合致する、ということは結構ありそうです。

まとめ

実はこの記事は、要因仮説の3点目について書きたくて書いたようなものです。なので、タイトルも3点目の話になっています。この話は、広告分野ではStrong TheoryやWeak Theoryと呼ばれるもので、前者は「広告によって消費者に新しい行動を起こすことができる」という説得的な考え方、後者は「広告にできるのは既存の行動の強化である」という主旨で、広告によって消費者が「自分なりの買う理由」を思い出すという考え方です。そして、私の意見は後者のWeak Theoryに強く共鳴するものです。広告分野に限らず、webサイト上でのコミュニケーションにも通じる話だと考えています。この話は『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』(芹澤 連著、日経BP社)の第8章で触れられていたので、ご興味ある方はどうぞ。原典は、アンドリュー・アレンバーグ教授による「広告は説得ではなくパブリシティである」という論考とのことです。

 

以上、webサイト上で「説得」はできるのか?についてでした。本日もお疲れさまでした。


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