以前、私が運用担当しているwebサイトのCV経路(=CV前にどのページを閲覧していたか)を分析したところ、以下のことがわかりました。webサイトで取り扱っているのは高額(15~300万円)の社会人向け教育サービスで、CVはサービスの無料体験申込みを指します。分析したCVユーザーのサンプル数は6000強です。
- TOPや無料体験申込みに直接関わるページを除いて、最もよく見られているページ(ページA)でも25%程度しか見られていなかった。つまり、1500ユーザーしかCV前にページAを見ていない。
- サイト全体のページ数は100以上あるものの、よく見られているページはかなり限られていることがわかった。ページが見られている割合が高く、ページの内容としてもサービスの説明として重要と思われる6ページ(ページA~F)を主要ページとみなした。
- 主要ページを1ページも見ずにCVするユーザーがおよそ50%を占めていた。
- 残り50%は主要ページを1ページ以上見てCVするユーザーであり、見ている主要ページのページ数はは以下の通り。(1ページ=ページA〜Fのうち1ページ見ている)
- 1ページ:20%
- 2ページ:13%
- 3ページ:9.5%
- 4ページ:5%
- 5ページ:2.3%
- 6ページ:0.8%
- ページの組み合わせにもよるが、主要ページのうち見ているページ数が多いほど、そのユーザーが顧客となった場合のLTVが高い傾向がある。
私はこの結果を受けて、「ユーザーは、マーケターや事業者側が思うよりも、真剣にwebサイトを見ていないのではないか」と分析前から薄々感じていたことが、あながち間違っていなさそうだと思えました。
webサイトを真剣に見ていない=効率的に情報収集している
「真剣にwebサイトを見ていない」とはかなり漠然とした言葉ですので、具体的に言い換えますと「web施策で影響を与え、CVR向上につなげられるユーザーは限られている」ということです。50%のユーザーはそもそも主要ページを見ていませんし、残り50%のユーザーも見ているページはまばらです。それだけ効率的にwebサイトを回遊している、ということです。これは、自分に置き換えるとイメージしやすい話で、皆さんもwebサイトで情報収集するのは効率的に行っているのではないでしょうか。それとは対照的に、webコンテンツで「気づけば2時間経っていた…」となる場合は、情報収集目的ではなく、暇つぶしとか楽しむために見ていることが多いと思います。
主要ページを見ていないユーザーは、ありがたい存在
主要ページを見ていない50%のユーザーについてですが、私は他の分析結果もふまえて、パッと申し込んだ人や、申し込んだ後にサイト回遊している人が多いとみなしています。パッと申し込むというのは様々な理由がありますが、もとからサービスの評判を知っていたり、まずは体験したい性格であったりといったことです。これらのユーザーはwebサイト上でどんなアプローチをしようがCVするわけなので、web施策で影響を与えられません。これは決して悪いことではなく、PR(外部メディア掲載)や広告、サービス利用者の口コミなどによって「わざわざwebで背中押ししなくてよい方々」が来てくださっているのであり、とてもありがたいことです。
主要ページを見ているユーザーが接客の対象
つまり、残り50%のユーザーが「web施策で影響を与え、CVR向上につなげられるユーザー」にあたります。しかし、「web施策で影響を与える」といっても、そこまで大したことはできません。せいぜいが、その人に適切と思われるタイミングで適切な情報を案内する、くらいのことです。webサイトに訪問するというのは、店舗に例えるとすでにお客さんが店の中に入っている状態です。私が運用しているwebサイトの場合は、店の中に15~300万円の高額商品が置いてあるわけです。そこで、店員さんが商品の説明をあれこれしてきたらうざかったり、一度にいろいろと言われてもよくわからなかったりしませんか?お客さんが商品の説明を読んで使用シーンをいろいろと考えている中で、わからないことがあったら店員さんに聞くのが自然な流れだと思います。そして、webサイトでは店舗のようにお客さんの様子がリアルタイムでわからない(いうなれば無人店舗)ので、そこがwebサイトの難しいところです。
では、50%の「web施策で影響を与え、CVR向上につなげられるユーザー」に対してどのような施策を打つのがよいかというと、主要ページA~Fに絞って、ページ内容の見直しやポップアップ掲出といった施策を打つのが最も効果的だといえます。他のページでいくら施策を試しても、そもそもあまり見られていないので効果がない、あるいは本当は効果があっても数字には表れづらいといったことが起こります。web施策はABテストで効果検証するのが一般的だと思いますが、ABテストは十分な母数がないと有意とみなせる差が出ません。(ABテストのサンプル数が少ないと分散が大きくなり、データの信憑性が下がります。要するに「ただの上振れ、下振れかも」と思えてしまうデータになります)
具体的なweb施策の考え方
そして、具体的な施策としては「より詳しく説明する」のではなく、「より分かりやすく、シンプルにする」方向が基本的には良いでしょう。webサイト上のコミュニケーションで「お客さんの気持ちが盛り上がる」「買いたい気持ちが醸成される」といったことはほぼないと考えます。これは、自分自身がwebサイトで買うときに「気持ちが盛り上がって買う」ことはほぼなく、みなさんもそういう人が多いと思うためです。私の場合、「こういうものが欲しいな」となったときに検索して、行きついた商品・サービスが自分の思っていたものと近く、予想外に良い点があったり、良くない点があっても許容できたりしたら買う、といった買い方をすることが多いです。これは割と一般的な買い方ではないでしょうか。そのため、端的に商品の良さを説明したり、不安要素を解消したりするのが効果的なのだと考えていますし、実際に私が運用しているwebサイトではそういった施策が効果を上げています。
本日は、webサイトは思ったよりも真剣に見られていない=ユーザーは効率的に情報収集している、という話でした。お疲れ様でした。
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