マーケティングとは「サイエンス」と「アート」らしい – webマーケターの考えごと

マーケティングとは「サイエンス」と「アート」らしい

「マーケティングとは、サイエンスとアートの融合である(ので、どちらも大事だ)」といった話を、マーケティング関連のメルマガで時折見かけます。例えばこんな記事があります。寄稿されているのは支援会社の代表など、実績も経験も厚い方が大半です。私自身、タイトルを見ると「うんうん、そうですよね。わかります」と思うのですが、いざ記事を見てみると、結論がふわっとしていてよくわからず「本当にこんなことが言いたいんですか?」と疑問に感じることが多く、モヤモヤしていました。

寄稿者を批判したいわけではなく、「サイエンス」と「アート」という言葉が便利すぎるあまり、どういう定義にもできてしまい、いざ記事にしてみるとおかしくなってしまうのではないかと考えています。カタカナ言葉って良くも悪くも「それっぽい」ですよね。おそらく、寄稿されている方が本当に伝えたいことはあるのに、「サイエンス」と「アート」という括りにすることで変な伝わり方になっていそうです。そこで、私もこのテーマに挑戦し、こういうことを伝えたかったのではないか?を再現してみようと思います。

私なりの「サイエンス」と「アート」の定義

まず、よくある定義は以下のような感じです。

  • サイエンス:ファクト、論理、定量、データ
  • アート:発想、直感、定性、感性

そして、上記のような定義をもとにして「サイエンスだけだと、お客様の心は動かせない。アートが大事になってくる」といった展開で、最近はマーケティングがサイエンス偏重になっているけれどアートも大事ですよ、という話がよくあります。しかし、こういった話の展開であれば、私には「定量だけでなく定性も大事だ」という当たり前なことを別の言葉で言い直しているようにしか思えません。寄稿者が伝えたいことは、本当にそんなことなのでしょうか?本当に伝えたいのは、「顧客視点で大事なことは何かを見極めましょう」ではないかと思います。それであれば、とても頷けます。

そこで、「顧客視点で大事なことは何かを見極めましょう」を伝えるために、「サイエンス」と「アート」を以下のように定義してみます。

  • サイエンス:確率的に考えること
  • アート:顧客視点で考えること

確率的な思考と顧客視点の思考を行き来する

マーケティングにおいては、確率的な思考(サイエンス)と顧客視点の思考(アート)を行き来するのが重要であり、かつ難しいところなのだと思います。

確率的な思考は、必ずしもデータを見ることとは直結しません。私見ですが、マーケティングとは、多数の顧客を相手に商品やサービスを売る活動です。(ちなみに、営業は一人や少数の顧客を相手に商品やサービスを売る活動であって、相手にする顧客の数以外はマーケティングと共通していると考えています。)そのため、顧客を群でとらえて「10,000人のうち100人がこのメッセージに反応して、そのうち5人が購入するだろう」といったように顧客の行動を確率的に考えることが求められます。データを見るから確率的に考える、のではなく、確率的に考えるからデータを見るのです。この順序はかなり大切で、前者のマーケターはデータに振り回されてしまうのかなと思います。

顧客視点の思考とは、素直に一人の消費者として、自社が売ろうとしている商品・サービスを検討してみる、ということです。これは、言うは易く行うは難しでして、ここにマーケティングにおける最大のジレンマがあります。マーケターは商品・サービスを売ろうとするほど、訴求点を検討するためにその商品・サービスを深く理解して、一般的な消費者からかけ離れた存在になり、見当違いのメッセージを出したりしてしまうのです。そのため、意識的に一般的な顧客の視点を取り入れることが必要です。手法としては、顧客と直接話をする(インタビュー含む)、エスノグラフィー調査(行動観察調査)をする、自身が他社の商品・サービスを買うときに何を考えているかを参考にする、などがあります。

顧客視点で大事なことは何かを見極める

顧客視点の思考を意識できていないと、確率的な思考だけでマーケティング施策を打つことになります。それでもたまに成果は出ると思いますが、ラッキーパンチで終わる可能性が高いです。webサイト上の施策を例にすると、以下のような感じです。

〇〇の顧客セグメントに△△というメッセージを出してみたら、CVRが上がった。→他の顧客セグメントにも△△のメッセージを試してみよう。

ここに顧客視点の思考を加えると、以下のようになります。

〇〇の顧客セグメントは□□という悩みを持つ人が多そう。そこで、△△というメッセージを出して反応があるか検証しよう。→CVRが上がったので、仮説が合ってそう。そうであれば、✕✕の顧客セグメントには別の悩みがあると思われるから、☆☆のメッセージを出してみよう。

顧客視点を加えるほうが、次の施策の成功確率が高そうではないでしょうか?このように、確率的な思考と顧客視点の思考を組み合わせることで、成功事例の再現や応用ができるようになります。施策がうまくいった(あるいはうまくいかなかった)背景にある仕組み=顧客が何を感じているか、を考えることで、施策の成功や失敗が具体的な一例にとどまらず、体系的な知見になるのです。

私は、顧客が何を感じているかという仕組みを考えてweb施策を展開することで、CVR向上という成果を出せていると実感しています。確率的な思考と顧客視点の思考は、意識して切り替えるというよりは、常にぐるぐると無意識に行き来している感覚です。これからマーケティングに取り組まれる方であれば、確率的な思考はせざるを得ないはずです。そのため、意識的に顧客視点の思考を取り入れられると良いのでは、と思います。

以上、マーケティングにとって重要な2つの思考についてでした。お疲れ様でした。


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